行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

誰かに聞いて欲しい人生の軌跡を、孤立している高齢者。

  始まりは、いつものように相手不明の未登録の番号から掛かって来る。私の電話着信は、7か所のうち5か所くらいの事務所の転送になっている。それでも、個人へ携帯電話を支給しているので担当者が自分で完結するので、多くて転送電話の着信は1日20件を超える程度だった。
 その中で、最近の一番多い相談電話は、居住確保の相談だった。今日も2ケースあった。そのうちの一つは、9時17分着信だった。そうして、記録によると10分の会話だった。
 出だしから、気弱な男性を感じた。口ごもったり、時には吃音だったり。やっと、お話を聞きだしたのは、部屋を変わりたい。その訴えが一生懸命で、何とか認めて欲しいと言う意識が強くあった。基準に合わないハンデを超えて受け入れて欲しい、とそんな感じが強く仕事から離れて聴く事に専念した。
 気が楽になったのか、自分のことを伝え始めた。どうして、この部屋を出たいのか。余りの劣悪で、我慢を強いられている。例えば、入って気付いたがエアコンが付いているという言葉を信用して入ったが、作動はしない代物だった。
 クレームを誰もが知っている不動産仲介業者に伝えると、
 「年齢が高く、孤立していて、保証人も緊急連絡先もない。生活保護の条件で貸す大家さんは居ないと言われて、希望に合致する住宅が100件あったとしても個人の合わない理由で2,3件の劣悪な住宅しか空いていない。と言われて我慢して貯めていた25万円を支払ってやっと一月前に入った。」
 そのようなことを言っていた。
 その25万円は何の負担なのか、年齢や家族や親族関係など言える範囲で聴いた。私どもの存在を政令指定都市が発行する「生活便利帳」で知った、という。
 衝撃は、自分が転居出来るのは来年10月頃で、1年後だと言うのだ。えっと、冗談でしょうと思っていると、
 「お金をこの引っ越しで使い果たして、これから1年かけて次の引っ越しの為に節制して貯めます。」
 と、言って
 「このような、保証人もいない、緊急連絡先もない、高齢者に貸す物件はあるでしょうか。」
 「大丈夫ですよ。何とかしますので大丈夫ですよ。」
私と同じ年齢で、遠方の故郷を捨てて都会に出て来て不遇の人生を結果的に送ることになったのだろうか。この方の人生の軌跡はどうなるのだろうか。この方の記憶にしか残らないのだろうか、そんなことをいつも思っている。
 時には、何度も訪問してお話を聞きながら一緒に情景を思い浮かべて、私の記憶をまさぐって、田舎のお祭りや食べ物やグッツの話をしたりして、過ごしたこともあった。
待っている方が沢山いるのだ。