行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

義理と人情に生きる昭和人に、死後事務委任契約を前に滲む涙。

  90歳を超える独居さんのお宅に伺って、故郷鹿児島県出水市のご親戚から依頼された生前事務および死後事務の委任契約について説明をする。
 地域包括支援センターの職員が同席してくれた。私が、ご本人が高齢で耳が遠いと聞いたので、後日聞いていないとかのトラブルに対処する事と依頼内容に齟齬があった時に指摘すて貰う為に同席をお願いした。
 ご本人は高齢で、誰にも迷惑を掛けないと一人で残りの人生を一生懸命に駆け抜けているのがありありと分かった。
 地域包括支援センター職員が、そばに座って耳元で話をする。うんうんと、頷く。
 発端は、鹿児島県出水市のご親戚の方が、来阪して市役所に相談し、地域包括支援センターを紹介された。地域包括支援センターが、当方を紹介してくれて、直接、ご親戚から相談の連絡を何度か貰って、この日に繋がった。
 故郷のご親戚は、本当は何が起きるか分からない年齢なので、直ぐにでも故郷に帰って来て欲しい、と言っていた。ご本人にもその説得を何度も試みたと言う。しかし、ご本人は、親族に迷惑を掛けたくない。
 故郷の親族に口添えをお願いされ、言葉にした私にハッキリと言った。
 「親族と言っても、家族ではない遠い親族。迷惑を掛けたくない。」
 故郷には一族で建てた大きなお墓があって、自分の遺骨はそこに入れる。つまり、
 「死んだ時には、そこに埋葬して下さい。」
と言う。
 今は、何も困っている事はないと言う。けど、色々進めて行くうちに、契約書を2倍の大きさに拡大して作成して持って行って説明しようとしたが見えない、と言う。
 また、耳が不自由という事で私のお話しを大きな文字で拡大印刷して、持参したが首を振って見えない、と言う。眼鏡をしていなかったので、気付かなかった。事前の情報も無かった。奥さんを3年前に亡くして、それからは我慢する暮らしをしていると知った。
 後から、親族に聞くと目が殆ど見えないと言った。不自由さを口に出さず、介護認定も受けず人に迷惑をかけずに孤独感を克服して生きる姿は、義理と人情を重んじた仁義に生きる昭和人そのものだった。
 時間を置いて、鹿児島県出水市の親族と連絡をとってこの日の様子を報告した。
 「可哀想に、可哀想に。」
と、人に迷惑を掛けない孤高の親族の想いに哀切の情を何度も言葉にしていた。そのお互いの情愛に触れて涙が滲んだ。
 業務から生まれる自己利益を押し殺して、誠心誠意負担にならないように対処しようと思います。
 その後、法務局に行って一段落し、久々に、スターバックスで一休みして、こころを平常にした。