行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

財産受け取り拒否、遺言書作成し直し

 身寄りが無い人だけが、「おひとり様」ではなく、兄弟や姪甥が居ても「おひとり様」になってしまうのを今日のヒアリングで知った。

 もう半年、毎月施設に通って遺言、死後事務、移行型任意後見の公正証書作成の支援を行って居る。

 Aさんは、80歳。8人兄弟のうち86歳Bさんに施設入所の時から保証人になって貰っていた。しかし、施設契約更新時期の昨年、Bさんは高齢を理由に保証人の継続をお断りした。

 施設が、地域包括支援センターに相談して保証人となってくれる事業所の紹介を依頼して、巡り巡って私に打診があった。

 条件があり、その条件を受け入れた。金銭だけではなく、当初は金銭管理を含んだ生前及び死後事務委任契約を締結した。

 その話しをして居る過程で、ご本人は離婚経験者で子供がいない。ある程度の財産があって、その財産をこれまで保証人としてお世話なった兄弟Bに死後渡したいとの希望があって遺言書を作成する事となった。

 それなら、と認知症になった時など施設長の経験上必要な公正証書を作成した方が良いとの言葉にご本人Aも納得してその方向に向かった。

 戸籍謄本や住民票、印鑑登録証などは施設長が付きっきりで私の指示に従って出来るだけご本人が行って行く様にし向け納得して貰いながら準備が完了して、最終確認に今日の2時から施設を訪問した。

 最後の確認を進めて居ると、立ち会っていた施設長が、

 「Aさん、このまま進めていいの。大事な事を先生に伝えないといけんしでしょう。」

 と、いう訳で、それでもモジモジして居るAに、痺れを切らして施設長が説明を始めた。

 それは、財産を受け取る筈のBが年齢が高い事から受け取りを拒否した。死後の納骨などの依頼もしたようで、確かに高齢になって必要な事ができない、自信が無いという訳だった。

 そうすると、遺言書の原案は作成し直しになった。それでは、次善の候補は誰にするのか、聞いた。

 妹Cの娘さん、姪のDとEという返事だった。この受け取り人を聞き出すまで、時間が掛かった。Cに渡すのではなく、その子だという不思議な事だった。

 事情は、よく知って居る施設長が説明を始めた。Cは、新興宗教に深入りし過ぎて財産を渡してもどのように使われるか心配だという。

 「その姪には、財産の受け取りの話しはしていますか?」

 勿論、していない。

 不安になった施設長の言葉で、もう少し時間を掛けて相手の気持ちを確認してキチンとした死後が手続きされる様に進めて行くことになった。

 長い期間掛けて、説明して理解をされてさあ公証役場へ移行する所まで来て、疲労困憊を一身に受けて、三輪さんの提案で鯛焼きの店が近くにあったので、食べて疲労を緩和させることにした。

 鯛焼きなんて、東京で勤務していた当時に日本橋の有名な鯛焼きのお店で購入した時以来だと思うので、20年以上振りだった。一番安価なのが250円で4個購入した。それにしても、高くなったものだ。あの当時は100円位ではなかったか。

 その鯛焼きを食べながら、今あった光景をしみじみと思い出して、兄弟や姪甥が居ながら「おひとり様」になってしまう、今の日本の現状に思い入った。

 誰でもが、「おひとり様」になってしまう環境を持って居る。

 やはり、念頭にあるのは自分の遺骨を収めるお墓と納めてくれる親族だ。

 そのいずれもが否定されたり気持ちが辿り着かなかったりして、自分の思いが通じない悲しみに包まれた、一気に老け込んだ感じだった。

 本当に、天涯孤独でひとりぼっちで生きて来た人は強い。その様な方に頼まれて、遺言書を書き換えて、遺言執行人が銀行だったが私が新たに就任して、それから数年経過するがその後は本人の意向で、連絡は当人から言われない限り私から声を掛ける事は禁止されて居る。財産は、全て当方の特定非営利活動法人へ寄付される事になって居る。土地建物も含んでいる。

 その方は、母親と二人っきりで生きて来たが。母親に先立たれてから10年位経過するが、孤独という感じはしない。政治評論家の様に、発言を発信して居る。本も出版して居る。目的やする事を持った人間は強い。

 孤独では無い。心の中で、母親と一緒に暮らして居るのだ。