行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

怖い二人の奥さん

 遠い。車で3時間。遠方での業務を行った上に、終わったと思ったら追加で依頼を受けて、2時間移動して難しい業務を行った。本当に疲れたが、疲労困憊したのは運転している三輪さんだった。本当にありがとう。

 さて、車で3時間の先、和歌山県境近くの泉佐野市にて、ご夫婦お二人の死後事務相談を受けた。相談仲介者の居宅介護支援事業者と地域包括支援センター主任介護支援専門員のお二人が立ち会った。

 先ず、一通りの基本的情報を伺った。その上で、困っている事、心配な事、依頼したい事を聞いた。老夫婦で自分達には、子も兄弟も親族も居ないので、いざとなった時にサポートして欲しいという典型的な死後事務委任のお話しだった。

 旦那さんは大きな事故に遭って後遺症を患って居て、主に奥さんがお話しになって居た。それがまた、速射砲の上に言葉が酷く、旦那さんをなんでここまで言うのか、とニコニコしてかわしている旦那さんに可哀想を通り越して哀れさを感じるまでになった。

 依頼内容に合わせて、幾つかのプランをお話しした。死後事務委任契約の公正証書は作成して行く事になった。加えて、任意後見契約の公正証書も作成したいとの事だった。

 付加として、葬儀保険への加入依頼もあった。今日は、飽くまでプランの説明だけで契約などの行為は次の段階を経て行う事にして、次の訪問日程を調整して、12月11日に決めた。

 外に出ると、仲介者の居宅介護支援事業者から今日の3時に次の案件を受けて欲しいとの要請があって、戸惑った。それは東大阪市の奈良県境に近い位置で2時間程度掛かると考えられる。

 それでも、折角のお話しなので住所を聞いて向かう事にした。途中、コンビニに経ち寄っておにぎりとカップ麺で昼食を頂いた。

 一路向かおうと時計を見ると後2時間しか無い。到着が3時だとのナビではギリギリの想定時間だった。道に迷ったらアウトだと言う追い詰められた状態での運転だった。

 訪問先近くで、数分遅れるとメールした。近隣に来ると仲介業者の居宅介護支援事業者が立って待って居た。数分遅れで、訪問宅の玄関で待って居た地域包括支援センターの二人の職員と名刺を交わした。

 二人も、と思って言われるままに部屋に入ろうとすると大声で、金銭のお話しをしている女性の声が聞こえた。

 相談内容は金銭管理だった。旦那さんは肺を患って居て、静かに話しをして居たが奥さんは一眼見ただけで無理かも知れない、と思わせる雰囲気を漂わせて居た。

 玄関を入る前に、居宅介護支援事業者と地域包括支援センター職員に、

 「金銭管理を依頼したいと言う気持ちがあって、通帳やキャッシュカードを預託する気持ちがある人ですか?」

 と聞いて、納得されていると返事があったので訪問した。

 部屋に入ると、先程の大きな声でお金の話しをしているのは担当のケアマネジャーだと知った。早速、説明を受けた。

 こんな事があるのか、と思わせるルーズさだった。家賃が9ヶ月滞納、水道料金が考えられない金額の滞納、医療費も入院費用が40万円以上滞納などと年金収入の10倍を超える滞納があって、手持ち資金が全く無い。

 金銭管理と言いながら、未納金や未払い金、借金の返済計画と実行だった。ただ、そう思っているのは周辺の人だけで、本人はツユほども思っていない。

 通知での請求は無視。集金に来る者には、請求額よりも少ない額を渡して追い返す。追い返す殺し文句があって、よく聞く言葉だ。殺す気か、と言って旦那さんの命に関わる窮状を訴えるというものだ。

 話し始めて、追い詰めて行く。普通だったら、自分の行っている言動に反省するのだが、当事者では無い私に言われる筋合いはないのだ。自分には自分のやり方がある、他人に金銭管理をして貰う積もりは無い、と事前に聞いた周辺の方達の言葉とは違う。

 殺し文句の「殺す気か」が出たので、

 「誰がそうしたのか、自分がそうしたのだから少しは考えないと。」

 大きな声で言い放った。

 睨みながら言葉を発しない。旦那さんは、気弱な声で任せたいと言う。しかし、気が強い奥さんは、納得しない。年金が高めで、少しずつ負債を返済しながら生活していけるので、少し返済に向かう姿勢をお話しした。

 介護支援専門員が、知った滞納額や生活費用などを聞き出して一覧表を作成して居た。しか、多分これが初めての話しでは無いと思った。常に同じ話しをして一覧表を作って諌めているのだろうと、話しをするとそうだと言う。

 大事な返済の話しになると、細々支払っていない金額をスラスラと答える奥さん。返済の話しになると支払うプランではなく、電気が止められると旦那さんの酸素吸入器が作動しなくなり死んでしまう、と言う。

 それを言って、止めさせない。支払わなくても通電が可能になる。水道もガスも同じだった。これが、入退院を繰り返している旦那さんの入院治療費滞納にも通じている。

 厄介な案件で、勿論、受注はしたくないのは本心だ。女性3人の担当者の説得に不承不承に受け入れる事になった。受けたく無い私と依頼したく無い相談者。

 1時間余りで、次の訪問時に具体的なプランを示す事で終えた。玄関で地域包括支援センター職員に、

 「先生にお願いした場合の費用はどのくらいでしょうか?」

 「当事務所の規定で、金銭管理費は月基本定額2万円プラス入金など1ケース千円など加算されます。しかし、現状では費用を取れる状態では無いので、少し考えます。」

 そう返事して、帰路に着いた。

 永く厳しい今日の仕事だった。二つの案件で共通していたのは、いざとなったら強い奥さん。勉強になりました。何か、それでも中に入れる様な気がして、自信が湧いて来た。

 朝、退院支援を行なっている患者の退院先の入所施設担当者と今後の対応打ち合わせを行った。




 昼間は、ミャンマー人災育成法人東京支社長から電話があって、今後の戦略について情報提供だった。

 夕方には、補助金申請サポート事業者から、申請が通るとの想定に具体的な今後のスケジュールの話しをした。