行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

親族の財産を知ると、人が代わるのは世の常

 大分、以前の記憶の中で思い起こすことがある。
 成年後見人制度の説明を依頼された。ケアマネジャーが、親族からお願いされていたので、被後見人が入院している病院で親族に会った。それまでに、ケアマネージャーが自分の担当している利用者の認知状態が悪く、遠方にいる親族と連絡を取り合い、私も何度か会って成年後見人の就任を依頼されていた。病院で会った翌朝に親族からその電話があった。
 「成年後見を叔母さんに付ける為に手続きを取っているのですが、実際言って何もはっきりした事がわからないのです。成年後見人を付けることによって生じるデメリットやメリットを知りたいのですが。」
 今更おかしい、と今までの経験から財産を確認して何か魂胆があると察知して、その思いに沿う様な誘導的回答を行った。
 「強いて言えば、被後見人の権利を守る、安全安心な生活が出来る様に守る、と言うのがメリットです。もし良ければ、サイトがあり私の恩師が解説しているのですが、それ見ればメリット、デメリットが沢山掲載されています。」
 その様な話から始まった。
 その後の質問辺りから、親族が認知症を発症した方の財産を見て後見人となりたいと思っている事が想像出来た。暫くすると、
「私が、後見人になる事が出来るのでしょうか。」
 いよいよ、本心が出て来た。
 前段の質問はどうでもいい、カムフラージュで自分が後見人になって認知症患者の財産を管理できる立場に立ちたいのだ。甥の位置と相当遠方の距離に住んでいることなど勘案すると、家庭裁判所が彼に成年後見人をさせる審判はないと思えた。特に財産が多額過ぎるので。
 「勿論、出来ます。」
 そう言って、後見人候補者の欄に自分の名前書いて申立します、などと手続きの一端をお話ししてから自分の名前を入れたから選任されるとは限らない事など説明した。
 「書類は自分で作成出来るでしょうか?」
 「時間は掛かりますが、大丈夫です。私も、自分達が作るべきだと思っています。分からない事があったら、有償で専門家に聞くこともできます。」
 「お宅に教えて貰いながら、出来ますか?」
 「いや、地元に帰ってから作成する訳ですので、近くの弁護士や司法書士などに依頼した方が良いと思います。」
 そう言って、何度か頼まれたが、
 「私どもは、成年後見人になる事を前提にお手伝いさせて頂きますが、もし、ご自身が成年後見人になる事で進めるなら、地元の弁護士や司法書士に頼んだ方が良いです。」
 と、言って振り切ったよ
夕方、認知症患者をずっと面倒を見て来たケアプランセンターケアマネジャーから電話が来た。
 結論的には、
 「親族の甥さんは、あの金額を見て目が眩んだのでしょうか、ね。」
 「そうですね。」
 「あれから、定期預金証書も見つかり、総額数千万円ほどになって、生命保険証書もありました。」
 そんな話から、人間の気持ちの大きな変化が、金額を見てどう変わったか、つぶさに報告があった。
 その話の中には、
 「社協に金銭管理をお願いしようと連れて行ったのですが、説明を聞きその質問を聞いて、社協の担当者が言うには、絶対、自分でやろうとしているよ、と言っていました。」
 その様な報告の後、
 「私たち、無駄な動きになってしまいましたね。また、何かありましたらお願いします。」
 そう言って、ケアマネジャーは電話を切った。