行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

最前線復帰

 寝込んで2週間もすると、仕事への思いも自分への思いも薄れてしまう。根性の男と言われた私も勿論病には勝てない。その病を得て、当初の3日間は、激しい嘔吐感で食欲が全く無く水も飲みたく無かった。

 すっかり死に向けてまっしぐらだと認識した。この仕事をしていると、高齢者の死に際に立ち会うこともあった。自分が、何も口にしたくない時に思い出したのは、死に向かう方への食事や水の摂取介助だった。何度か水を飲んで貰おうと声掛けをしたが、要らないという。

 ずっと長い間面倒を見ていた私の声掛けに、断ってばかりでは申し訳ないと思ったのか、スプーンで一口だけ無理して口に含んだが、直ぐに吐き出した。

 水分も摂取したくない気持ちは、死へ向かう自然な形だな、と思ったと同時に自分の死期も近いかな、と言う意識になった。この時に、死に際して往生際に際して静かに迎えが出来る精神構造を知った。

 食欲も全く無かったし、あの3日間は私にとって貴重な体験となった。別に達観した訳ではないが、無理をせずに自分の体調と付き合って仕事に向かおうと思った。そんな余裕を持って、午後からの「委任事務・任意後見」「遺言」「死後事務委任」の公正証書最終確認の書類準備して、昼食にマンションに戻った。

 その時に、地域包括支援センターから電話があった。社会福祉士が相談に乗っている高齢者への支援依頼だった。家族が集合体から、分散した。最初娘さんが、パリで生活する事で旅立った。続いて、日本に残っていた父親と母親のうち父親が亡くなった。

 パリで生活していた娘さんが、夢破れて帰国する。父親の財産の相続を半分ずつ行ったが、現金は別にして家をどうするか、揉めた。母親は、後妻で血の繋がりはない。相容れないのっぴきならない関係になっていた。

 母親は年齢と共に、将来が不安になって地域包括支援センターに相談する。残りの人生を憂慮する事なく、財産を保持して娘と交わる事なく心穏やかに過ごしたい。

 そのような説明を受けて、来週金曜日に面談して、お話しを聴く事になった。その話し聞いている間に、やっぱり自分の身の置き所がここなんだな、と自覚した。

 そうして、次の依頼者が入所している高齢者有料老人ホームに向かった。先日、公証役場との最終確認が終わって、その書類を持って依頼者の最終確認をしに向かった。金額や氏名や財産などの重要な部分の確認をして終わった。今後は、公証役場での認証する日時調整に動く。

 有料老人ホームを出て、隣のケーキ屋さんに入った。オープンテラスにて、スイーツを頂いていると、鹿児島県出水市の依頼者から電話があった。死後事務契約を交わしている方が先日亡くなった。お一人様で遠方の親族が、最終確認者であって運の悪い事に大手術を行う直前に、事案が発生する。私も上京していた。

 警察が入り、手続きが終わった段階で私が引き継いで動き始めたのだが、病に寝込んでしまった。その後の進展具合を気にして聞いて来た。

 役所への手続きは来週になる事や遺骨は来月の半ば以降に、鹿児島県出水市に届ける事を伝えた。

 大手術を終えて間もないのに、働かなければいけないので、退院して自宅療養を短くして4月から勤務すると言う。手術は成功して放射線治療は不要だと言う事で、親族が身代わりになってくれたと言っていた。

 さて、明日は精神病院にて退院して自立したい方への、支援打ち合わせを行う事になった。