行政書士から拡張業務へ

基本資格行政書士を活用して代書屋からの展開

余命宣告されている方との最後の僅かな時間

 朝11時に出て3時間、集合住宅を訪問して生前及び死後事務委任契約を交わして、通帳とキャッシュカード、印鑑を預かった。

 戦後間もない時に不安だったろうに、十代半ばで遠方から出て来た。どんな思いだったのか想像も出来ない。只々、哀れな気持ちが湧いて来ていた。

 今なら考えられない年少で、国宝のお城が有る故郷の話しを聞いて、それからの人生を色々と聞かさせて貰った。

 この私より二十歳も年長であるにも拘らず記憶がハッキリしていて、メガネも使わず補聴器も無く、普通に会話していたのには驚いた。

 只、歯が無く治療もせずにいたので言葉が所々はっきり分からず困ったが、何とか雰囲気で応えて気持ち良く過ごして頂いたと思う。

 終始和やかな雰囲気で、短時間で九十年以上の人生を駆け足で聞かさせて貰った。指物などと言う言葉を知っていたので、返す言葉に熱が入っていた。

 持参した生前及び死後事務委任契約書の内容も理解して頂き、ました。

 「全てお任せします。」

 と、言われて、余りの信頼感に変に戸惑った。

 依頼する内容によって、預かりするものが異なる。そう言った説明にも全く認識力が衰えるどころか、そのしっかり度に舌を巻く。

 ケアマネジャーと遺品整理業者などの立ち会いの下、契約書に印鑑を押印して貰った。契約書の原案は、入院中に持参して説明をしている。その際には、文字を1.4倍に拡大して概要を説明していた。

 「、、、という事で、現金をお預かりするか通帳と印鑑かキャッシュカードをお預かりして、契約書にある作業を実行します。ですので、いつから行って欲しいのか、必要が生じたらご連絡下さい。」

 「今、直ぐに預けていいです。」

 「それでは、通帳と印鑑、キャッシュカードお預かりしますが、暗証番号を教えてください。」

 「○○○○です。」

 それにしても、この方の生き様か、几帳面で驚くばかり。諸々を記録しているノートを見て、また、びっくり。

 「必要だったら持って行くか。」

 と言われて、返事に窮した。

 未だ、記録途上で人生は終わっていない。

 長期の節制の金額が通帳に入っている。その様な日々節制して来た金額なのに、どうして私が契約だからと言って、毎月2万円を受け取る事が出来るのだろうか。

 帰りの車の中で、しみじみと三輪さんに、その事を話をして、

 「、、、なので、生きている間は無報酬で対処する事にした。」

 と、言った。

「もしもの事があったら、残った財産とかどうしますか。どなたか、相続する方に渡さないと行けない。誰かに受け取って貰わなければ、誰も手を付けられずに、最後には国に入る事になる。」

 「寄付します。分ければいい。あんたに全部一任します。宜しく頼みます。これで、安心した。」