兎に角、人の話を聞かない超高齢者
土曜日だが、何も変わらずいつもの時間に出勤する。冷気に堪らずヒヤッとして首をすくめながら歩を進める。私は、仙台で過ごしていた時から靴下は履かない。余程、寒いとか冠婚葬祭で必要がある時には履くが直ぐに脱いでしまう。気持ちが悪いから。
しかし、足元が冷たい時があるので、部屋では電気絨毯や事務所ではガスストーブを点火している。学生時代は剣道一途だったので、冬は道着の沁み込んだ汗が凍っていてそれを着て稽古中に溶けて汗臭さが充満して苦しい。その練習中にまた朝が出て道着に染み込んで、翌日には凍っていて、繰り返す。私が剣道に打ち込んでいた間に洗濯した事がない。
足は当然ながら素足で、板の間は冷たい極みで、氷の上に素足で立っている様だった。余りの冷たさで、痺れている様な感覚に陥っていた。その日々の暮らしで、感覚が残ったまま社会人になったのである。
朝の寒さも、事務所に入れば和らいで仕事モードになる。午後から大家さんと超高齢者の立ち退き支援について協議があるので、希望していた家賃と地域を入力して物件のイメージを得られる様に、不動産データから抜き出して印刷した。
未だ、具体的な契約をしている訳ではないので、それほど突っ込んだ資料は不要だ。
続いて、月曜日に市役所での居住支援協議会にて、自分が事務局として発言要望する裏付け資料を印刷した。
もう一つ、急いでいる案件の処理をしたかったが、相談者の準備が整わずに中途半端だったが必要な様式の打ち込みをして僅かに進めた。
来月、新潟へ当社主催のセミナー講師をお願いしたのに対して面と向かって詳細の打ち合わせと、先進事例を沢山行なっているので学習に訪問させて頂く。
菊ちゃんと三輪さんが同行するが、その彼女たちにはグルメを提供してご機嫌を伺おうか、と思ってYouTubeで新潟グルメを30分弱検索して見た。
最初は、やはり米どころであるので、おにぎり屋さんだった。海鮮も美味しいので見るからに絶品の感じが伝わって来る。具はやはり「筋子、イクラ、鮭」と塩結びが食べたい。そうして、へぎ蕎麦、お寿司を食べたい。追加で、有名なバスターミナルのカレー、薄いカツの醤油タレのカツ丼も食べたい。
そんな動画を見ながら、心は既に新潟だ。
昼は一旦マンションに戻って昼食を摂った。一眠りしてしまった。午後2時頃に起きて、出発準備して車の中で三輪さん到着を待つ。車で10分くらいの隣の市域になる。駐車場に停車させてご自宅へ向かう。
大家さんは、旦那さんが施設入所しているので息子さんが神戸から来ていた。早速、揃って集合住宅に居住している90歳を数年過ぎた独居で無縁だと自称しているお婆さん家に伺った。訪問は先週に続いて二度目で、大家さんを通じて、ご本人も私に全て委任するとの返事を頂いての訪問だった。
一任内容は、転居に伴なう全ての行為について完遂まで。希望する物件の提供、転居、明け渡し、その他必要と認められる作業、である。問題が沢山ある。保証人、緊急連絡先が無い。物件の決定までご本人への連絡手段が無い。携帯電話は勿論、固定電話も無いのだ。孤独無縁で、不利な要件が多過ぎる。その課題を踏まえて何とか転居させないと行けない。
駐車場からご自宅へ向かう間も、寒風吹き荒む中、歩きながら戦略を練った。やはり、地元の懇意にしている不動産屋に依頼する他無い。歩いて2分で大家さん家に着いた。簡単に打ち合わせして、ご依頼者宅へ向かった。隣接している集合住宅2階である。
相変わらず92歳とは思えない元気で迎えられて入室した。大家さんが、簡単に今日の訪問趣旨をお話しして、私どもが引き継いでアセスメント調査に入った。初めて氏名を聞いた。生年月日を聞き、私の母親が生存していたら一つ上の方だと認識した。
お話しを伺いながら、先日もだが自分が言いたい事があるのだろうが、話し出すと人の話も聞かずに話を止め無い。私も、時には大家さんの時も聞いても質問には答えずに、大きな声で聞いても言っても、自分の話しを止め無い。普通に会話が出来て、聞こえている筈なのに返事もせずに一方的に話し続ける。
なので、時には質問した内容に知っている限りに大家さんが、答える。30分位だったが、多くの情報は得られなかった。それでも、私の規定する委託料はこれまでの2年で十数回と同じの60万円の契約書はスムーズに成立して署名押印した。
これまでは、解体業者からの依頼だった。古い集合住宅を購入した解体業者がオーナーとなって入居者に立退料を支払って明け渡しを求める。しかし、中には超高齢者、障害者、認知症者などの理由で自身で新たな物件を探せない。その様な入居者に、確実に退去できる様に支援する依頼を受けて来た。その際の退去料を私が建て替え業者から受けて実行して来た。その時、建て替え業者が私に示した委託料が60万円である。
昨年から始まって既に15ケース受任して完遂した。今回は、大家さんからの依頼だった。20部屋位ある集合住宅で、既に他の入居者は転居先が決まって、今日訪問すると引越し作業をしている部屋もあった。
基本的な希望は聞いたが、希望する家賃が余りにも安過ぎるが、その様な話しをしても聞こえない様に、その理由を言い続けて会話にならない。困ったものだ。生活保護受給も、年金収入が基準額とほぼ同じ程度で適用が厳しいと思うが、強要も出来ないのだ。
まあ、今日はここ迄で明日から集中して結果を得る動きをしようと、極力考えない様にして、新たに出来たスーパーに食材を買いに行って、夕食は美味しい豚汁を作って心身を温めた。


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